前回LBOについて学んだけど、実際にはどんな感じで行われるのかしら?
横文字の説明だけだとイメージつかないもんね。
今回はLBOの流れについて説明するね!
LBOのメリットやスキームについて
LBOのメリットとして、買収企業は少ない自己資金で買収ができることが挙げられます。
LBOの実施により少ない自己資金で買収が可能となることにより、例えば経営改革を成功させてLBOにより買収した企業の企業価値が大幅に上昇した場合には、少ない投資で大きな利益を獲得できる可能性があります。
ここではLBOの仕組みやスキームについて説明します。
LBOの仕組み・手法(番号は一般的な手順の順番となります。)
1.特別目的会社(SPC)設立
企業が保有する債権や不動産を流動化するための受け皿として活用されることも多いSPCですが、LBOにおいても用いられています。
LBOの買収資金の調達は設立されたSPCが行い、買収企業はSPCに出資(=株主)する形を取ります。
2.投資ファンドや金融機関から資金調達
設立されたSPCは、投資ファンドからや銀行などの金融機関からM&Aの買収資金を資金調達します。
SPCは返済に充てられる資産を保有していないため、譲渡企業の資産や将来のキャッシュフローなどを担保とします。
金融機関は融資を行う際に譲渡企業の返済能力を確認するため、LBOの対象となる企業は将来的なキャッシュフローや資産に高い価値が見込める企業が候補として挙げられることが一般的です。
3.SPCが譲渡企業を買収する
SPCは投資ファンドや金融機関からの融資資金を使用し、譲渡企業を買収します。
一般的にSPCは譲渡企業株式の100%取得を目指します。
そのため、株式の売却に応じなかった少数株主を排除するために、スクイーズアウトを行うことがあります。
スクイーズアウトは強制取得手続のことをいうよ!
スクイーズアウトの方法としては、主に株式等売渡請求を用いた手法、株式併合、全部取得条項付種類株式、株式交換の活用が挙げられます。
買収が完了することで、SPCは親会社、譲渡企業は子会社という関係になります。
4.SPCと譲渡企業を合併する
SPCと譲渡企業が合併を行うことで、一つの企業に統合します。この場合、SPCが消滅会社、譲渡企業が存続会社となります。
SPCと合併した譲渡企業は、SPCの持つ借入金を引き継ぐこととなり、融資を受けた金融機関等に返済していきます。
LBOを行う「PEファンド」とは何か?
LBOは主に色々と種類がある投資ファンドの中でもPE(Private Equity)ファンドによって実施されます。
PEファンドとは非上場会社の株式に投資し、利益を出して投資家に還元するファンドのことをいうよ!
PEファンドの目的は、非上場会社を株式上場させたうえで株式を市場に売り出すことや、経営改善により株式の価値を高め、別の会社に対して高く売却すること利益を得ています。
また、PEファンドにはベンチャーキャピタルをはじめ複数の種類があります。
LBOは主に買収を行うバイアウト型とよばれるPEファンドによって実施されます。
バイアウト型とは、投資家から集めた資金を元手に、成熟した企業の過半数の株式を取得して経営に関与し、株式価値を向上させた後に株式の売却によって利益を得るファンドのことです。
そのため、以下のような企業は、経営成績やキャッシュ・フローともに安定的であるため、LBOの対象になりやすい企業であるといえます。
・内部留保が多く自己資本比率が高い
・有利子負債が少ない
・事業環境が安定している
また、PEファンドが積極的にLBOを行う理由の1つにレバレッジ効果が挙げられます。
レバレッジ効果とは、少額の投資資金で大きなリターンを期待することを指します。
レバレッジ効果をLBOにあてはめてみましょう。
ファンド側は借入を行うことが前提のため、準備する自己資金は少なく済みます。
金融機関からの大幅な借入金を使用して買収を行うため、レバレッジ効果を享受できるというわけです。
このレバレッジ効果を利用すると本来であればファンドの自己資金では対応不可能であった規模の企業買収が可能になります。
MBOの内容やメリット
MBOとは、経営陣が自社の株式を買い取って、経営権を握るM&A手法です。
MBOには、経営の自由度や効率化、事業承継などのメリットがありますが、既存株主との対立や経営変革の停滞、資金調達のリスクなどのデメリットもあります。
MBOには、以下のような具体的なメリットがあります。
経営の自由度や効率化が図れる
MBOによって現経営陣が会社の意思決定権を掌握することで、迅速な意思決定が可能となります。
意思決定のスピードが上がれば、自社の中核となる事業に組織内の経営資源を集中的に投下するなどして、経営の効率化や業績向上をスムーズに実現できる可能性があります。
既存の会社組織を維持できる
MBOでは、経営陣が株式の取得をして株主構成が変化するだけです。
よって、MBOによって会社組織には変化はなく人材を含めた経営資源がそのまま引き継がれるので、事業や従業員の雇用がそのまま継続します。
事業承継による後継者問題の解決
MBOは、事業承継時の資金調達を円滑に行うために活用されるケースがあります。
MBOと事業承継の結び付きがイメージしにくいかもしれませんが、参考情報としてこのようなレポートもあります。
MBOは事業承継の有力な選択肢になり得るか?(
三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
事業承継には多額の資金が必要となるため、資金調達面で有利なMBOスキームが利用されることがあります。
従業員からの理解を得やすい
MBOでは、現在の経営陣が経営権を取得するため、従業員からの反発やモチベーションの低下を防ぐことができます。
外部の第三者へ経営権が渡る場合、従業員は雇用の継続や雇用条件の変化において不安を抱いてしまいますが、MBOであれば経営陣が変わらないので、従業員の目線からみても安心できる手法です。
敵対的買収を防げる
MBOによって経営陣が株主となり、一定の割合の株式が保有されます。
非上場株式であれば譲渡制限株式となる場合が多く、譲渡には株主の同意が必要となるため、敵対的買収を回避する効果も期待できます。
LBOとMBOとの違い
LBOは投資ファンドや金融機関など、外部の資金によってSPCが設立され、SPCによって買収が行われます。
しかし、MBOはManagement buyoutの略で、売り手企業の経営陣が既存株主が所有する株式を買い集め、SPCを設立、自社の買収を行うという面で違いがあります。つまり、もともとの経営陣が株主となるわけです。
また、EBOはEmployee buyoutの略で、買収資金の調達原資が従業員となります。
MBOとEBOは経営陣または従業員が経営主体となり、企業内部の人間である点で共通しています。
どちらも、株主の干渉やプレッシャーから離れることで大胆な事業改革を行うためのM&A手法です。
経営陣と従業員が一緒に資金調達と買収を行うMEBOという手法も存在します。
しかし、多くの場合、MBOやEBOを行う際、経営陣と従業員だけで集められる資金には限界があるため、外部の投資ファンドなどから力を借りることになります。
そのため、MEBOはLBOの性格を持った手法で買収を行うことがケースとしてみられます。
ひとくちに企業買収といっても色々な形態があるもんだなぁ。
誰が企業買収の主体となるかによって意味合いが変わってくるのね。
LBOとMBOの共通点としては少ない自己資金で買収が行われることに共通しているよ!