ようやく最後のステップにきたね。。
えびくん、おつかれさま!よく頑張ったわね!
ステップ5では収益の認識をしていくわけだけど、ここでも論点があるから最後まで気を抜かず解説するね!
STEP4 取引価格の「配分」はこちら↓
収益認識に関する会計基準には5つのステップがある。
5ステップのそれぞれに検討する論点があり、各ステップの論点を検討を漏れなく終わらせてから次のステップに進むことがコツです。後戻りがあると結局は2度手間で余計に時間がかかるためです。
新収益認識会計基準には「①契約の識別」→「②履行義務の識別」→「③取引価格の算定」→「④履行義務の取引価格への配分」→「⑤履行義務の充足による収益の認識」の5ステップに分かれています。
収益認識について検討する際にはこの5ステップの順番に従い進めていきます。
ただし、取引によっては該当のないステップがある場合は、そのステップは飛ばして次に進みます。
STEP⑤ 「一時点」か「一定期間」かの判断をしよう
要件のうち1つでも該当したら「一定期間」になるよ!
最後のステップにおいては、いよいよ履行義務に基づく収益の認識を行うわけですが、ここでも論点があります。
最も重要な論点は収益の認識を「一時点」で行うのか「一定期間」で行うのかについてです。
収益の認識は、履行義務の充足パターンに従って収益を認識することになります。
識別された各々の履行義務が、「一定の期間」にわたり充足されるものか、「一時点」で充足されるものかを判定します。
ではどうやって判定するのか?
以下の(1)から(3)の要件に基づいて判定することとなります。
以下のいずれか1つでも満たす場合、支配が顧客に移転すると認められる一定の期間にわたり収益を認識します。
いずれも満たさない場合は、支配が顧客に移転した一時点で収益を認識します。
「一定期間」にわたり充足される履行義務とは何なのか
先ほどの要件のいずれか1つでも満たす場合は、一定の期間にわたって履行義務を充足し収益を認識すると説明しました。
「一定期間」にわたり充足される履行義務の場合、考慮しなければならない論点があります。
それは、履行義務の充足に係る「進捗度」です。
「進捗度」とは「一定期間」にわたり収益を認識するに基準となる指標のことです。
進捗度を見積る方法は2つあります。
「アウトプット法」と「インプット法」です。
「アウトプット法」と「インプット法」のどちらの方法で見積るのかは、財又はサービスの性質を考慮して決定します。
進捗度 | 内容 | 指標の例 |
---|---|---|
「アウトプット法」 | 現在までに移転した財又はサービスの顧客にとっての価値を直接的に見積る方法であり、現在までに移転した財又はサービスと残りの財又はサービスとの比率に基づき、収益を認識します。 | ・現在までに履行を完了した部分の調査 ・達成した成果の評価 ・達成したマイルストーン ・経過期間 ・生産単位数 ・引渡単位数 |
「インプット法」 | 契約における取引開始日から履行義務を完全に充足するまでに予想されるインプット合計に占める、履行義務の充足に使用されたインプットの割合に基づき、収益を認識します。 | ・消費した資源 ・発生した労働時間 ・発生したコスト ・経過期間 ・機械使用時間 |
進捗度を合理的に見積ることができない場合は収益を認識することはできません。
ただし、進捗度を合理的に見積れなくても発生費用の回収が見込まれる場合には、原価回収基準によることになります。
原価回収基準は進捗度の合理的な見積りが可能になるまで、回収が見込まれる費用の額で収益を認識する方法のことをいいます。
「一時点」で充足される履行義務とは何なのか
先ほどの要件のうち、いずれも満たさない場合は、財又はサービスに対する支配が顧客に移転し、履行義務が充足された一時点で収益を認識します。
顧客に支配が移転したことを示す指標の例示としては以下となります。
① | 企業が顧客に提供した資産の対価を収受する現在の権利を有している |
② | 顧客が資産の法的所有権を有している |
③ | 企業が顧客に物理的占有を移転している |
④ | 顧客が資産の所有に伴う重大なリスクと経済価値を享受している |
⑤ | 顧客が資産を検収している |
代替的な取扱いについて解説
収益認識会計基準では「一時点」or「一定期間」で収益を認識するのが原則的な方法です。
これに対して、収益認識会計基準においては代替的な取り扱いが認められています。
順番に解説していきます。
その1 出荷基準は採用できるのか?
国内の販売であれば、出荷及び配送に要する日数は通常数日程度であることが多いので、出荷時から顧客への支配移転時までの期間が通常の期間である場合には、出荷時点で収益を認識しても金額的な重要性が乏しいと考えられているよ!
出荷基準等に関しては、重要性に基づく代替的な取扱いが設けられています。
以下を満たしている場合には、出荷基準や着荷基準の採用が認められています。
つまり、出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時までの間の「一時点」に収益を認識することが認められています。
①国内販売であること
②商品又は製品の販売において出荷時から支配移転時までの間が通常の期間であること
その2 契約の初期段階における原価回収基準の取扱いはどうなる?
契約の初期段階では、費用の発生金額に関して、重要性が乏しいと考えられているよ!詳細は 「一定期間」にわたり充足される履行義務とは何なのか で記載しているから割愛するね!
その3 期間がごく短い工事契約及び受注制作のソフトウェアの取扱いはどうなる?
期間がごく短い工事契約等については、金額的重要性の観点から、本来は「一定期間」なんだけど「一時点」で収益認識することが認められているよ!
工事契約や受注制作のソフトウエアについて、取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い場合、一定の期間にわたり収益を認識するための要件を満たす場合であったとしても、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識することができます。
その4 船舶による運送サービスにおける留意点は?
複数の顧客による貨物を積載している場合であっても、単一の履行義務とみなして、一航海(発行地から帰港地到着まで)の期間にわたり収益を認識することができるよ!
収益認識会計基準に照らした場合、一定の期間にわたり収益を認識する船舶による運送サービスについて、履行義務の識別や進捗度の見積りを行うのが本来のやり方です。
しかしながら、一航海の船舶が発港地を出発してから帰港地に到着するまでの期間が通常の期間である場合には、複数の顧客の貨物を積載する船舶の一航海を単一の履行義務としたうえで当該期間にわたり収益を認識することができます。
「一時点」or「一定期間」について要件はきちんと吟味しよう
「一時点」or「一定期間」の判断は、四半期報告書や有価証券報告書において、その内訳を開示するケースが多いです。
そのため、要件についてよくおさらいのうえ、吟味して判断しましょう。
上場会社であれば、監査法人の担当者に事前にすり合わせておくといいでしょう。
ふぅっー、売上取引一つとっても、5つのステップを使って判定しないといけないから大変だなぁ。
論点がたくさんあるから、頭がごちゃ混ぜになりそうだわ。。
複数種類の取引がある場合はマトリックス図を作成して、どの取引にどんな論点があるのかを整理するのがオススメだよ!