知り合いが東京プロマーケットへの上場を目指すらしく、東京プロマーケットって初めて聞いた名前だけど東証と何が違うのかしら?
東京プロマーケットも東証が運営している市場の一つだよ!特徴について説明するね。
TOKYO PRO Market(TPM)の特徴
東京プロマーケットは、株主数・流通株式・利益の額などの形式基準(数値基準)がないのが最も大きな特徴です。
TPMではこれらの数値基準は求められておらず、上場企業としてふさわしい内実を持っているのであれば、会社規模の大小に問わず株式上場が認められます。
(以下表は東証HPより引用)
項目 | TOKYO PRO Market | (参考)東証他市場 |
---|---|---|
開示言語 | 英語又は日本語 | 日本語 |
上場基準 | 形式基準:なし 実質基準:あり | 形式基準:あり(株主数、流通株式等) 実質基準:あり |
審査主体 | J-Adviser | 主幹事証券会社、東証 |
上場申請から上場承認までの期間 | 10営業日 (上場申請前にJ-Adviserによる意向表明手続きあり) | 2、3か月程度 (標準審査期間) |
上場前の監査期間 | 最近1年間 | 最近2年間 |
内部統制報告書 | 任意 | 必須 |
四半期開示 | 任意 | 必須 |
主な投資家 | 特定投資家等 (いわゆる「プロ投資家」) | 一般投資家 |
特徴その1 株式の買付けはいわゆる「プロ投資家」に限定
TPMでは株式の取引(買付け)にあたり、プロ投資家のみに限定されています。
他の証券取引所では、多様な一般投資家が参加するとの前提があり投資家保護のための様々な制度が設けられています。
一方でTOKYO PRO Marketは株式の購入が投資の「プロ」に限定されています。
投資家がプロのみであるため、TOKYO PRO Marketでは上場できる会社の範囲を広げているため、形式基準がないのです。
特徴その2 着手から上場までの期間が比較的短い
TOKYO PRO Marketでは監査法人の監査期間が1期分のみとなります。
一方、他の証券市場では上場前の2期分について監査法人の監査が前提となっています。
そのため、TOKYO PRO Marketでは他の市場に比べ上場準備に着手してから上場するまでの期間は相対的に短いものといえます。
特徴その3 J-Adviserによるサポートがある
TOKYO PRO Marketでは、東証より認証を受けた「J-Adviser」を呼ばれる企業が、東証の上場審査に代わり必要な調査を行うことになります。
J-Adviser上場後も上場企業に義務付けられる情報開示の支援を行うため、この点は証券会社と大きく異なります。
特徴その4 上場後の開示資料の負担が比較的少ない
参加者をプロ投資家のみに限定することにより、四半期報告書や内部統制報告書といった情報開示制度の適用が任意になっています。
特徴その5 これまで通り会社支配権を維持したまま上場することが可能
流通株式に関する形式要件がないことにより、既存株主は株を手放す必要はありません。
つまり、上場時において他の外部投資家を株主とする必要はなく、仮に既存株主が1人で全株式を保有していた場合は、引き続き既存株主の支配権は継続したままとなります。
TPMは「上場会社へのステップアップだ」とする声
TPMはプライム市場のように利益や時価総額等の形式基準はありません。
そのため、上場要件が緩和されているにもかかわらず、グロース市場等と同じく「上場会社」というカテゴリーに属するという点に変わりはありません。
そのため、TPMに上場することで「上場会社」としての以下のようなメリットが想定されます。
メリット① 会社的信用度の向上(事業資金調達の可能性UP・取引先の拡大・人材の確保)
「上場会社」というネームバリューを獲得することができ、TPMとはいえ会社の知名度や信用度が上がることになります。
会社の信用度が上がることで金融機関からスムーズに資金調達が可能となります。
また、「上場会社」という安心感から、取引先の拡大や人材確保において有利となるメリットがあります。
メリット② 社内管理体制の強化
上場会社となることにより、TPMであっても他の市場と同様の適時開示義務(四半期報告書や内部統制報告書除く)があるため、企業情報の適時適切な開示が求められます。
これに伴い、他の市場と同様に社内の人材配置や内部管理体制を整備・運用する必要があります。
メリット③ 従業員のモチベーションアップ
自分たちが働く会社は「上場企業」であるということは、従業員へのモチベーションアップに貢献するかもしれません。
上場企業となることで、従業員の家族に対する心象が良くなったり、また、住宅ローンの審査において有利となる可能性があります。
TPMは「東証グロースと比べると中途半端。。」という声も
TPMへの上場にあたり、「中途半端だ」「意味がない」との声も少なからずあります。
その声はTPM単体に対してというよりも他の市場との違いに関するもので、その背景について紹介していきます。
最大のデメリットは多額の資金調達が難しいこと
TPM最大のデメリットは、東証の本則市場(プライム・スタンダード・グロース)と異なり、投資家がプロの投資家のみに限定されていることです。
そのため、取引が活発に行われず、通常では上場時に行われる新株発行による増資や売出しを行い多額の資金調達を行うことが難しい側面があります。
資金調達によるメリットとして、株式市場を通してより多くの投資家から資金を集め、その資金を投資することで、事業展開を加速できることが挙げられます。
多額の資金調達を行うためには上場する市場規模が大きいほど有利だといえます。
その点では、東証グロースでの上場の方が資金調達に有利であり、また、世間からの注目も高いため、TOKYO PRO Marketでの上場は中途半端であるという声もあります。
2022年4月1日現在における市場別の会社数・上場時の時価総額基準・経営成績の基準を比較してみました。
取引市場 | 会社数 | 時価総額基準 (新規上場時) | 経営成績の基準 (新規上場時) |
---|---|---|---|
東証プライム | 1,839社 | 250億円以上 | 最近2年の経営利益合計が25億円以上 または 売上高100億円以上かつ時価総額1,000憶円以上 |
東証スタンダード | 1,466社 | なし | 最近1年間の利益が1億円以上 |
東証グロース | 466社 | なし | なし |
TOKYO PRO Market | 52社 | なし | なし |
TPMからグロース市場へステップアップする際にもネック?
TPMでは四半期報告書の開示や内部統制報告書の開示義務はありません。
しかし他の市場と同様に適時開示義務等を含めた企業情報の開示を行う必要があります。
もし、TPMからグロースへ鞍替えする際には、上場会社で求められる適時開示業務の人員を確保し対応をしたうえで、グロース市場への上場準備を同時にすることとなるため、TPMを経由しない上場と比べて負担感があると言われています。
TPMへの上場と相性が良い会社は?
グロース市場での上場を目指すうえで従業員のモチベーションアップをしたい会社
グロース市場への上場はTPM上場と比べ難易度が高い面があります。
TPMのJ-Adviserのように上場を支援してもらいながら審査してもらえるような体制ではなく、東証及び証券会社からの審査を両方とも通過する必要があります。
そのため、グロース市場への上場にあたり、スケジュールの度重なるリスケや断念といった場面も珍しくありません。
こうなると従業員のモチベーションもなかなか維持しづらく、まずは上場会社へのステップアップとしてTPMへの上場を目指すことも一つの選択肢となるかと思います。
資金調達は求めておらず、信用度や知名度の向上を考えている会社
TPMでは本則市場のように資金調達は望めない反面、上場会社という肩書きを得るという点では他の上場会社と変わりません。
上場会社であることを名乗れるのは当然として、名刺にも記載にも載せることができるため、非上場会社と比べ信用度や知名度の面で大幅な向上が見込めます。
事業承継を考えている企業
事業承継においてネックとなる部分について、TPMへの上場を目指すことにより解消され、結果として事業承継がスムーズにいく場合があります。
具艇的には以下となります。
①後継者問題
①後継者問題については、経営を引き継ぎたい人材もしくは経営者に値する優秀な人材がいない等の問題があります。
上場会社となることで知名度や信頼性が増すことで優秀な人材が集まる可能性が上がります。
②金融機関からの借り入れに関する経営者の個人保証
また、②経営者の個人保証についても、事業承継にあたり十分な個人資産がないと連帯保証人から抜けることができなかったり、抜けたとしても後継者にとっては負の財産を相続することになるためリスクとなります。
TPMへの上場にあたり経営者の個人保証を解消する必要があるため、結果として事業承継をスムーズにすることに貢献します。
なるほど、他の市場と比べて株式上場へのハードルは低くされているのね。
知り合いの社長はグロース市場に向けたステップアップということかしら。
そうだね、上場に向けてターゲットとなる市場のうちの一つということだね。
東京プロマーケットから本則市場へステップアップした会社も出てきているので、TPMも今後より注目を浴びることになりそうだね!