
とある会社の決算書を見ると売上が急増していたので、これからも伸びそうだね。



それ、もしかすると “循環取引” かもしれないよ。



「お、この会社伸びてるな!」と思ったら……実はということもあるかもね。循環取引の仕組みについて解説するね!
循環取引とは?ざっくり1分で理解
循環取引とは、企業間で商品やサービスを繰り返し売買し、実際の価値移動がないにもかかわらず、売上や利益を水増しする不正な取引のことです。
例えば、A社がB社に商品を売り、B社がC社に同じ商品を売り、最終的にC社がA社に売り返す――このループで実態のない売上が計上されます。
この行為は、企業の財務諸表を良く見せるために行われることが多く、特に上場企業や資金調達を目指す企業で問題視されています。
例えば循環取引は、以下のような流れで進行します。
• ステップ1: A社がB社に商品Xを100万円で売る。
• ステップ2: B社がC社に同じ商品Xを100万円で売る。
• ステップ3: C社がA社に商品Xを100万円で売り返す。
この結果、各社は売上100万円を計上しますが、実際には商品が動かず、キャッシュの移動もない「見せかけの取引」です。
このように、商品やお金をグルグル回すだけで「売上」が立つ構図が典型です。
表面上は通常の取引に見えるため、非常に発見しづらい不正です。
なぜ循環取引がなくならないのか?



循環取引は昔から存在していて、現代になってもいまだ存在し続ける不正取引の1つだよ!
1. 短期的な利益追求の誘惑
企業は株主や投資家からのプレッシャーを受け、短期的な業績向上を求められます。
特に、売上目標を達成できない場合、循環取引は手っ取り早く数字を「盛る」方法として選ばれることがあります。
2. 監査の限界
監査法人は循環取引を見抜く努力をしていますが、巧妙に隠された取引は発見が難しいのが実情です。
例えば、複数の子会社や関連会社を介在させることで、取引の追跡が困難になります。
3. 社内チェックも通過
循環取引は架空売上と異なり、取引自体は存在しています。
例えば、取引に実態があるように見せかける工夫(例えば、微妙な価格変更や書類の偽装)が施されると、取引自体は存在しているため、社内での内部チェックが行われても「問題なし」と判断されるケースも。
4. グローバル化と複雑な取引網
現代のビジネスは国境を越えた取引が当たり前。
国際的なサプライチェーンやオフショア企業を利用することで、循環取引はさらに見えにくくなっています。
循環取引を見抜く5つの視点
その1. 不自然に一致する売上と仕入のタイミング
循環取引では、企業間で商品やサービスを相互に売買するため、売上と仕入の金額・タイミングが極端に一致することがあります。
たとえば、月末に売上高と同額の仕入が発生している場合、それが複数期続いていれば警戒すべきです。
チェックポイント
- 同じ取引先に対する売上と仕入が同日に記録されているか
- 同額か、または非常に近い金額が継続しているか
- 決算期末に集中していないか
その2. 異常に短い商品回転期間や売掛金・買掛金の回収・支払い期間
循環取引によって生み出された売上は、現実のキャッシュフローを伴わないことが多く、異常な回転期間が発生します。
売掛金の回収が極端に早かったり遅かったりする場合、不正の兆候と考えられます。
チェックポイント
- 売掛金と買掛金の回収・支払いサイクルが通常より大きく乖離していないか
- 実際に商品が移動している形跡があるか(納品書・在庫データなど)
その3. 取引先の実態や関係性の不透明さ
循環取引に関与する企業は、しばしば関係会社やペーパーカンパニーです。
実在性や取引の継続性が薄い企業が登場する場合、その裏に循環取引が隠れていることがあります。
チェックポイント
- 取引先の所在地・資本関係・役員構成を調査する
- 初めて取引を開始した会社なのに、大きな金額の取引をしていないか
- 取引履歴が数回のみ、あるいは短期間で終了していないか
その4. キャッシュフロー計算書との不一致
循環取引では、売上が増えても実際には現金の流れが伴わないため、損益計算書とキャッシュフロー計算書の整合性が取れていない場合があります。
営業キャッシュフローが赤字なのに、売上が伸びている場合は特に注意が必要です。
チェックポイント
- 営業活動によるキャッシュフローと売上高のトレンドに違和感がないか
- 営業利益率に比べて、現金の増減が極端に乖離していないか
その5. 監査法人・内部監査からの指摘や変更履歴
監査法人が頻繁に変わっていたり、内部監査から売上認識に関する指摘が繰り返されている場合は、循環取引が発覚する前兆かもしれません。
循環取引を発見するためには、こうした履歴も無視できません。
チェックポイント
- 直近において監査法人から重要な指摘事項があったか
- 売上計上基準の変更や説明が急に加えられていないか
- 経理部門の責任者が頻繁に交代していないか
会計数字には人の意図が隠れている
売上や利益という数字は、時に“演出”されることがあります。循環取引は、その代表例です。
循環取引は、企業が短期的な利益を追求する中で生まれる「悪しき習慣」です。
売上が増えている=良い会社、とは限りません。
会計とは、数字の世界ですが、裏には必ず“人の意図”が隠れています。循環取引は、その意図が“虚偽”の方向に向かった結果です。
過去には、循環取引が原因で大きなスキャンダルに発展したケースがあります。
例えば、2000年代のエンロン事件では、関連会社を使った循環取引が発覚し、企業破綻に繋がりました。
日本でも、架空取引や循環取引が問題視された企業は少なくありません。
これらの事例は、循環取引がいかに企業や投資家にダメージを与えるかを物語っています。



数字の裏を見れるようになるのはなかなか難しいねぇ。



売上が伸びているからヨシ!とするのではなく、疑ってかかることも大事ということかしら。



循環取引は発見の難しい取引だけど、一歩下がって俯瞰して歪みがでているポイントがないか、一度立ち止まって見てみよう!