友人の会社が新規に子会社を取得したようなんだけど、経理担当が仕訳で監査法人に指摘されたとか言っていたので心配だわね。。
僕も心配性だから、会計処理で気を付ける点があればぜひ教えてほしいなぁ。
子会社の取得「後」の留保利益について、税効果会計の適用は実務でもよく忘れがちな論点だから解説するね!
前提知識:「個別上の投資金額」と「連結上の簿価」とは?両者になぜ差額がでるのか。
子会社へ投資を行った時点では、取得費用を除き、子会社への投資に関する取得価額と当該投資の連結貸借対照表上の価額は一致しています。
しかし子会社株式の取得後、子会社における当期純損益の計上や「のれん」の償却等により、連結貸借対照表上の価額が変動することに伴い、子会社に対する投資の連結貸借対照表上の価額と、親会社における個別貸借対照表上の投資簿価との間に差額が生じます。
当該差額は、親会社の個別財務諸表上の投資簿価(=税務上の投資簿価)に含まれていないため、連結財務諸表固有の一時差異となります。
よって、連結子会社等の留保利益は、連結財務諸表固有の将来加算一時差異に該当するため、原則として繰延税金負債が計上されることになります。
取得「時」の利益剰余金の取り扱いは?
ここまでの話は、連結子会社等の取得「後」利益剰余金について税効果を認識しましょうという話でした。
一方で、取得「時」の利益剰余金について税効果会計はどうなるのでしょうか?
連結子会社等を取得した時の利益剰余金(投資時に留保している金額)についても、将来において追加的な税額が発生する要因となり得ます。
しかしながら、取得「時」の連結子会社等の利益剰余金は、連結上の投資簿価と親会社個別決算上の投資簿価は一致しています。
よって、会計上の投資簿価と税務上の投資簿価との間に差異は生じていません。
そのため、取得「時」の連結子会社等の利益剰余金に関する将来加算一時差異については税効果を認識しません。
したがって、連結財務諸表において当該税効果は認識されません。
繰延税金負債の計上について
連結子会社の留保利益に係る将来加算一時差異については、以下の場合を除き税効果の対象となります。
これが例外規定となります。
・親会社が子会社の利益を配当しない方針を採用している場合
・株主間の合意により配当しない方針がある場合等の追加で納付する税金が見込まれない可能性が高い場合
税効果の対象となった場合は、将来の配当時に発生する見積税額を繰延税金負債として計上します。
連結子会社の場合
子会社等が内国法人の場合は受取配当金のうち益金に算入される額に課せられる法人税等の額を繰延税金負債として計上します。
持分法適用会社の場合
持分法適用会社の処理は連結子会社と同様です。持分法が一行連結と言われるゆえんですね。
連結子会社と異なるのは親会社の支配があるかどうかという点です。
そのため、持分法適用会社の留保利益についても、連結子会社と同様の処理です。
連結子会社と同じく追加納付の発生が見込まれる税額について繰延税金負債を計上します。
子会社が利益を配当する方針の場合は税効果に気を付けよう
ポイントをおさらいしましょう。
①税効果の対象となるのは子会社取得「後」の利益剰余金であること = 原則として繰延税金負債を計上する
②配当しない方針がない限りは税効果を適用することとなること = 例外に該当するかどうか判断する
以上2点を覚えてもらえれば、子会社の「留保利益の税効果」を誤ることはなく監査で指摘されることもありません。
ふむふむなるほど
原則として税効果を適用するということだから、確かに仕訳を入れ忘れてしまいそうだわね。。
留保利益(=取得「後」利益剰余金)に対して課税されることを頭に入れたうえで、上の①②を意識してみてね。
今回は前編だけど後編もあるよ! コチラ↓